山と糸の真

このブログは社会問題化している伊藤詩織さんと山口敬之さんの事件の考察記事をアップしていきます。

盗撮? パソコンの捜査でここまで解明できる。

伊藤さんは著書、ブラックボックスの中でノートパソコンで盗撮されたと言っています。

そしてそれが逮捕が必要な理由だと言っています。

山口さんのノートパソコンにはカメラがなく盗撮はありえないと言われ、任意の捜査で正しい確認ができるのか?押収したパソコンが現場にあったパソコンとわかるのかと疑問を投げかけています。

でも、心配には及びません。

まず、押収は任意ではなく強制です。

捜索差押許可状(通称、ガサ状)の執行は、逮捕前だろうと任意聴取の前だろうと効果は同じです。

通常は朝にピンポーンとインターホンが鳴なり「**署のものですが、少しお話をお伺いしたいのですが」と言ってきます。で、ドアを開けるとそこには数名から十数名の刑事が睨みを効かせています。よくドラマでもあるシーンですね。

で、少し話を聞いてから令状を出し、捜索の開始です。

有無を言わさずに、仕事に必要なパソコンやスマホ等を押収してしまいます。

東京なら警視庁と書かれたダンボールで運び出すので、近所でこのダンボールを持ったイカツイ人たちがいたら差し押さえの最中です。

 

警察は押収したパソコンの解析を行いますが、パソコンやスマホなどの機器にはMACアドレスという固有のIDが振られています。このIDはホテルなどのルータに接続するときに利用され履歴として残ります。

ルータには接続した全てのパソコン、スマホの固有の情報が残っているので、どれがホテルで使われたか間違えることはありません。

すなわち盗撮はありえないのです。

これで逮捕は必要なかったということになりますよね?

まさか逮捕して自白強要や人質司法など望まないでしょうしね。

 

 

 

なぜ民事裁判で勝訴なのに刑事では不起訴なの?

伊藤さんの事件では、

「民事裁判では同意のない性行為が認定されたのに、なぜ不起訴?」という疑問の声が上がっているので解説しましょう。

以下に準強姦の場合の刑事裁判と民事裁判の違いを書きます。

 

証拠や根拠

刑事:第三者機関である警察や検察が捜査権を用いて捜査した結果を裁判所に提出

民事:原告、被告の当事者が自分に都合の良いものを提出

 

判決の根拠

刑事:証拠に基づいて認定しなければならない

民事:裁判官の心証により認定できる

 

何を争うか

刑事:被告人が犯罪を犯したかどうか。被告人が犯罪だと認知していたことが大切

民事:原告が被害にあったかどうか。被告の故意過失は問わない

 

裁判の結果

刑事;刑罰を持って罪を償う

民事:お金でそれぞれの利益、不利益の帳尻をあわせる

 

つまり民事での判決は、裁判所や第三者機関が調べた結果ではなく、当事者の主張のどちらが正しそうかという裁判官の心証に過ぎません。

このため民事裁判で個人が大企業に勝つのが難しいという弊害が生じます。お金がある方が説得力のある裁判資料を作成できるからです。

今回の裁判では伊藤さんの6人の弁護士に、山口さんの手弁当弁護士が勝つのは難しい面があります。

 

また、刑事では被疑者が対象で被害者は参考人に過ぎませんが、民事では、被疑者が犯罪は犯したかどうかは関係なく、被害者が被害にあったかどうかを争います。

被疑者が犯罪を犯したか、被害者が犯罪にあったかは裁判の対象ですらありません。

 

また、刑事裁判の結果が刑罰なのに対して、民事裁判の結果はお金の支払いです。

どちらかの行為により、どちらかが多く損害を負ったのなら、その分を補償しなさいということに過ぎません。

 

一言でいうと民事裁判は、言い争いをお金より仲裁することです。

 

 

被害者は被疑者の逮捕を知りえるか?

前回、中村格氏の逮捕中止命令は異例か?の記事を書きましたが、被害者は加害者の逮捕を知りえるかという点でもう少し説明をしてみます。

被害者は刑事とやり取りをしているので、逮捕についてある程度の推測はできます。

例えば、海外や遠方にいる場合は、来てもらう必要が生じるかも知れないので、これこれの期間は日本にいて欲しいと言われる場合があります。

警察は被疑者を逮捕したら48時間以内に送検する必要があります。

送検をされると、検事は書類を吟味し、被疑者に対して調べを行います。

準強姦罪のような被害者の供述が重要な事件では、被害者にも登庁してもらい話を聞きます。そうして起訴するかどうかを決めるのです。

また、告訴状の提出によって逮捕が近いことを知ることもできます。

親告罪の場合は、被害者の告訴がないと犯罪が成立しません。

よって逮捕の前には告訴状が必須となります。捜査がある程度進んだ段階で要求される告訴状は逮捕の前兆と言っていいと思います。

逆に捜査が進まない段階での告訴状の受理は被疑者に任意聴取をするためのものと考えられます。

今回のケースでは逮捕が難しい旨を警察から伝えられているとあるので任意聴取のための告訴状でしょう。

任意捜査の予定が強制捜査に切り替わるのは、よほど重大な証拠や事情の変化が必要ですが、その形跡はみられません。

もし仮に逮捕状を請求したとしたら、やはり海外在住で日本の住所が不定なため海外逃亡を防止するために一応とったと考えるのが自然です。

そして被疑者は逮捕の前兆をしることはできますが、具体的な日付などを知ることはできません。

本当に逮捕できるかどうかわからないと考えているのは捜査員も同じです。