山と糸の真

このブログは社会問題化している伊藤詩織さんと山口敬之さんの事件の考察記事をアップしていきます。

逮捕はなぜ執行されなかったのか? 伊藤さんの疑問に答えます

伊藤さんの著書ブラックボックスを読んでいると、逮捕をしなかたことについて、捜査一課の捜査官がしっかりと説明している場面がありました。

簡単に書くと、

・被害の訴えがあれば逮捕状は簡単に出る。

・海外にいるなど居場所がわからない場合、逮捕状を取っておく事はある。

・帰ってきた時点で行方がわかるのなら逮捕する必要がなくなる。

・今回は隠滅する証拠もない。

・社会的に地位のある人は逃走の恐れがないので逮捕されにくい。

 

私も全く同意見ですが、伊藤さんは疑問を感じているそうです。

それならば、伊藤さんの疑問に答えてあげましょう。

 

・今回は逮捕状は簡単に出なかった。捜査を重ねて逮捕状がでた。

これは伊藤さんの認識間違いですね。捜査の結果、特に犯罪を裏ずける証拠は出ていません。某カメ映像で酔っている事はわかっていました。その後は、酔っている事を裏ずける証言以外は出ていません。

そもそも最初から任意で山口さんに話を聞く方向で捜査を進めています。それが覆るためには決定的な証拠が必要ですが、そんなものは有りませんでした。

 

・証拠隠滅の恐れはある。ノートパソコンの盗撮は?

これはこちらに詳しく述べています。

 

・社会的地位の低い人はすぐに逮捕するのか?優遇になっていないか?誰の基準か?

法律で逮捕するためには、逃亡または証拠隠滅の恐れがある場合と定められています。当然、失うものがある人とない人では逃亡の確率が変わってきます。

考えてみてください。粗暴なヤクザと、真面目な社会人、同じ扱いでいいと思いますか? 

 

・逮捕の必要がないという判断がなぜ、当日に捜査員が配備されたあとなのか?

なぜ、伊藤さんがそこまで詳しく知っているのでしょうか? 本当に捜査員は配備されれていたのでしょうか? 

まあ、少なくても言えるのは決裁は下りていなかったという事です。それでも配備するほどの証拠が揃っていたとは思えません。

 

以上で、答えになったでしょうか?

 

#追記

 

ブラックボックスを読み進めているのですが、この後にも逮捕に対する伊藤さんの疑問が会ったのでお答えしたいと思います。

 

A氏から電話があり、本部には逐次報告していた。逮捕状のことも知っていたはず。「有名人だから逃走しない」という理由で逮捕を取りやめたのなら、初めからストップできるはず。

で、伊藤さんは、捜査一課の説明は正しくない。捜査一課よりももっと上のポストからストップがかかったはず、と述べています。

 

でも、これって所轄の判断を本庁が覆したという伊藤さんの主張と矛盾しますよね?初めっから本部が判断できたんだから。

それに、有名人だから逃走しないという理由で逮捕を取りやめたなんて誰も言っていないですよね。逮捕する必要がないから逮捕しなかったというだけで。

で、捜査一課の決裁者が刑事部長なんだから、そりゃあ、判断はしますよね。

 

で、A氏は一人で言ってもちゃんと答えないから、弁護士と行くことと言った?

いや、、それは組織人としてないですよね。流石に。

多分ですが、A氏が言ったのは「一人で言ってもちゃんと理解して話ができないから弁護士と行くこと」ではないですかね? 警察が言っても分かってもらえないのなら弁護士の先生とちゃんと話てよってのはよくあります。

 

 

 

犯罪心理学 プロファイリング 伊藤さんの主張する犯人像

以前、なぜ民事裁判で勝訴なのに刑事では不起訴なの? - 山と糸の真

で述べたとおり、刑事事件では被疑者が犯罪を犯したかどうかの判断が重要になります。

ここでは伊藤さんの主張を元に山口さんが犯罪者である可能性を犯罪心理学(捜査心理学)の側面から検証してみたいと思います。

 

日本における犯罪心理学の研究は科学警察研究所や科捜研を中心に行われてきました。

伝統的にはポリグラフ、通称嘘発見器を用いたものが主流でしたが、最近はプロファイリングを用いたものも導入され始めています。

プロファイリングには大きく分けて2つあり、一つが統計分析。もう一つが事例分析です。

統計分析は主にコンピュータを用いて分析され、多数の犯罪情報から統計的に犯人の属性や行動パターンの推定を行うものです。

事例分析は心理学を利用し犯人の行動特徴を分析するものです。古くはFBIの連続殺人犯の分析が有名です。この分析は犯行を秩序型(計画的)か無秩序型(突発的)かに分類し、それぞれの犯人像を推定します。

 

分析などと言うと難しく感じますが、このタイプの犯行ならこのタイプの人物が犯人だよね、などの推論は経験的に行われてきました。

裁判でも、計画的な犯行か突発的な犯行かで量刑が変わったりします。

 

では、伊藤さんが訴える犯行はどのようなものでしょうか?

 

伊藤さんの主張

・犯人はドラッグを利用して同女を意識不明の状態にした(計画性)。

・意識がないのに乗じてホテルに連れ込んだ。

・意識のない同女の体を傷つけた(サディズム)。

・すぐに犯行を行わず明け方に姦淫した(無秩序)。

・同女が意識を取り戻した後も悪びれずに行為を続けた(無秩序)。

・同女の訴えにより一時行為を中断した。

・再び同女を力ずくで襲おうとした(無秩序)。

・パンツ頂戴などの変態的な発言を悪びれず言う(サディズム?)。

・犯行後、何事もなかったように電話をかけてきた(犯罪意識がない)。

・犯人はポリグラフにかけられたが反応は出なかった(犯罪意識がない)。

といったところです(カッコ内は行動の分類です)。

 

プロファイリング的には、山口さんは秩序型ですね。地位を失いたくないはず。頭がいいのでバレないように考えるはず。そのほかに秩序型の特徴として飲酒しての犯罪、ストレスがある、などの特徴があります。見事に一致するでしょ?

 

しかし犯罪形態を見ると計画的とは言えません。だって、酒を飲んだ寿司屋は恵比寿の繁華街。こんなところで意識がなくなったら目立たずに運ぶことはできません。

ましてや薬で眠らせて・・山口さんくらいの体格の男性が意識のない女性を運ぶのは無理です。どうにもなりません。その後の行動も突発的で計画的とは言えないものばかりです。

秩序型というのには無理があります。

 

では、無秩序型ではどうでしょう。

無秩序型の中でも魔が差すタイプの犯罪があります。女性が酔いつぶれたのをみて、これならバレないと思い犯行に及ぶパターンです。高い地位があり知能の高い男でも魔が差すことはあります。

この場合の犯人の心境としては、犯行が発覚しないことが重要です。

なので、酔いつぶれているうちに犯行を行おうとしますし、犯行中に女性が目を覚ましたら慌てふためきます。ましてや女性の体を傷つけて自ら証拠を残すことはしません。

また、心理的に怯えた状態なのでポリグラフで簡単に反応が出ます。任意ならば拒否するでしょう。

このパターンも今回は当てはまりそうにありません。

 

次に考えられるのが、自暴自棄タイプ。

会社からお叱りをうけ、自暴自棄になっていた可能性を考えてみましょう。

このタイプの特徴は犯行を隠そうとしません。サディズムに走る傾向もあるので体を傷付けられたという女性の主張とも一致します。

しかし、一般的に人間は長いストレスの蓄積で自暴自棄になります。色々あがいた結果、逃げ道が全てなくなり自暴自棄になるのです。

まだまだチャンスがあるのに自暴自棄になる人はいません。

この時の山口さんの状況は会社からお叱りを受ける一方で著書の前評判はよく、楽しみでもあると考えられます。人生を捨てる覚悟はなかったでしょう。

また、このタイプの人は、犯行をすぐに認めます。逮捕され人生がリセットされることが、が今の人生からの逃げ道ですから。

また強い罪悪感を抱きますので、警察の捜査を受けるとあっさりと自供をしますし、ポリグラフにも反応が出やすいタイプです。

このタイプも山口さんの状況とは一致しません。

 

最後は無秩序型の代表である粗暴タイプ。

基本的に社会的な立場や知能が低く犯罪を繰り返すタイプです。

このタイプは物事を深く考えません。なのである意味なんでもありです。

体に傷をつけるなんてサイコパスも入っている可能性もありますね。

酔いつぶれたから犯す。目が覚めても犯す。

バレて捕まりたくはないけど、訴えられない可能性も高いと根拠なく思い込みます。

伊藤さんの供述が正しいとすると(薬はありえないとして)、この粗暴タイプが一番近いと思います。

しかし、、犯人像があまりにも山口さんとかけ離れています。

また、このタイプは捜査での追及やポリグラフの検査を回避できるほど、物事を考えていません。

 

よって心理学的に分析すると伊藤さんの主張する犯人像と山口さんは一致しません。

犯行を行なった可能性は低いと見ることができます。

 

捜査一課への不信感? 所轄と異なるタクシー乗務員の捜査報告書 記憶はあるの?ないの?

またもやブラックボックスから。

伊藤さんは、以下のような情報を得たと著書に書いています。

 

・捜査一課で作成された捜査報告書には所轄の捜査員から聞いたタクシー乗務員の「女性は駅で降ろして下さい」と「何度も言っていた」という証言が記載されていない。

・乗務員の聴取は一度だけだった。

 

まずは捜査報告書の説明から、

引用しようと画像をググったのですが、、

ありませんね。まあ、そういう表に出さない警察の内部資料です。

 

捜査報告書とは、捜査一つ一つの報告書です。捜査記録をまとめた簿冊(一件記録)ではなくどこどこに聴取に言ったとか、誰々を逮捕したとか一つ一つの職務の報告になります。内容としては、いつ、どこで、誰が、誰に対して、どうした、どうなったということを書きます。

タクシー乗務員の聴取であれば、氏名、所属、聞いた場所、聞いた内容を書きます。

基本的には警察内部の報告書であり、警察官が聞いたものをそのまま書きます。

聞き取り捜査の結果を書くものとしては、他に供述調書がありますが、供述調書は確認してもらい捺印してもらう対外的(裁判)にも有効な書類です。

 

報告書にしろ供述調書にしろ聞き込みが一回であれば報告書も一つです。

捜査一課と所轄が別々に報告書を作ることもありません。

そもそも所轄の刑事課から捜査一課に捜査が全面的に変わるわけではなく、本部から来た捜査員と所轄の捜査員の合同捜査です。なので見ていてる書類も同じです。

 

つまり、捜査一課の見ている捜査報告書に記載がなければ、所轄の捜査報告書にも「何度も言っていた」という記載はなかったのです。だって同じものですから。

そして、捜査報告書は捜査員の聞いたものをそのまま書くものです。報告書に記載されていなければ捜査員も知りません。ましてや、被害者に教えて報告書に書かないなんてあり得ません。

 

捜査員が知らない「何度も言った」という発言をなぜ伊藤さんが知っているのか?

 

この時はタクシー乗務員の聞き込みもしておらず、タクシー内の記憶もないと主張しています。 

不思議ですね。

 

もう一つ疑問なのは伊藤さんは「報告書に記載がない」という情報をどこから得たのでしょうね?普通は表に出さない情報です。

まあ、捜査官が聴取中に言うことは考えられます。例えばですね。

伊藤さん:タクシー運転手は何度も言ったと言っています。

捜査官:そんなこと捜査報告書には書いてないよ。

って、感じですね。

なら、情報得たなんて意味深な書き方しなくてもいいのにと思いますが、、捜査官との関係が悪いのバレちゃうからかな?いや、著書を読んでも関係は悪そうですよね。